道路の陥没、配管の劣化、橋梁の老朽化。精密に検査しようとすると、一か所あたりの費用がけっこうかかります。それに、調べたい箇所は多い。全部に精密検査をかけていたら予算が持ちません。
だから実際には「危なそうな箇所」を先に調べるしかない。どこを優先するか、その「あたりをつける」部分こそ、コストのかかる作業です。
スクリーニングという考え方
精密検査とスクリーニングは、目的が違います。
精密検査は「異常を正確に判定する」ため。スクリーニングは「次に精密検査すべき箇所に順位をつける」ため。この二つを混同すると、AIに高すぎる要求をかけることになります。
スクリーニングに求めるのは、完全な正確さじゃない。「見逃しはある、でも重要な箇所を先に拾えれば十分」という割り切りです。この割り切りができると、使えるセンサーや取得方法の選択肢が一気に広がります。
スマホの振動センサーで走行ログを取る
路面の状態は、車で走ると振動として伝わってきます。この振動を、スマホの加速度センサーで記録する。それだけです。
スマホには Phyphox のような計測アプリがあり、GPSと組み合わせれば「どの地点で、どのくらい振動したか」のログが取れます。同じルートを定期的に走れば、前回との差分も見えてくる。
精密な路面計測装置とは比べものにならない精度ですが、スクリーニング目的なら十分使える可能性があると思っています。「この区間は前より振動が増えた、一度ちゃんと調べよう」という判断材料として割り切る。
「見逃しを許容する」は設計の欠陥ではない
見逃しを許容すると言うと、いい加減に聞こえます。でもスクリーニングにおける見逃しは、設計上の欠陥ではなく、割り切りです。
精密検査がゼロのままより、スクリーニングで優先順位をつけて精密検査を回し始めるほうが、カバーできる範囲が広い。全体の安全水準を上げる目的で考えると、どちらが現実的かは明らかです。
問題なのは、スクリーニングの結果を精密検査の代わりに使うこと。「振動が少なかったから問題なし」は言いすぎで、「振動が少なかったから今回は後回し」が正しい読み方です。
今どこまで考えているか
これは実際に運用した話ではなく、構想とPoC段階の考察です。
スマホで振動ログを取る仕組み自体は、Phyphox+GPSロガーで試せます。問題は後続の処理です。ログを集めて、異常値を検出して、地図に落として、前回との差分を出す。ここをどう設計するかはまだ詰めていません。
それでも、この「精密検知ではなくあたりをつけるだけ」という方針は、インフラ保全に限らず使える考え方だと思っています。精度を上げようとするほど仕組みが重くなる。どこで割り切るかを決めることが、実際に動く形に落とし込む最初の仕事だと感じます。
