「AIを社員に使わせたいけど、ChatGPTにそのまま社内情報を打ち込まれたら困る」という相談を受けました。
AI自体は使いたい。でも野放しにすると、誰がどんな情報を外のサービスに送っているか分からない。そのまま禁止するのも損だし、なし崩しに許可するのはもっと怖い。この板挟みで止まっている会社は、わりとあります。
私がそこで作ったのは、社内専用のAIチャット環境です。外のサービスに情報を出す前に、まず「社内の入口」を1つ作る、という発想です。
全社解禁の前にやること
やり方はシンプルです。社員が使うチャットのUIを、外部のサービスではなく自社で管理できる形で用意する。外に情報が出るのは、その入口を通った後だけにする。
社内専用のチャット環境(私はLibreChatを使いました)を立ててしまえば、社員は見た目には普通のAIチャットを使うだけです。でも裏の設定は自分たちで持てます。
社員(ブラウザからアクセス)
↓ 社内専用チャットUI
モデルと権限の切り替え層
↓ 用途に応じた接続先
外部AIモデル(API経由)
この間に一段挟む。それだけで、「誰がどのモデルを、どんな権限で使っているか」を管理できるようになります。
用途ごとにモデルと権限を分ける
ここが核心です。「AIチャット」を全員に同じ形で渡すと、強いモデルに社内情報を全部投げる社員が出てきます。社外に流れる情報の範囲が読めなくなります。
私はこの環境を設計するとき、用途別に2つの軸で切り分けました。
1つ目はモデルの強さ。軽い文章校正や要約には軽いモデルを割り当て、高精度な推論が必要な用途には強いモデルを使う。使い分けはUIの「モード選択」程度の操作で切り替えられるようにしました。社員がモデルを意識しなくて済む形です。
2つ目は権限の範囲。社内ドキュメントのファイルを渡して要約させる機能は、役職や部署で使える人を絞る。一般的な質問応答は誰でも使える。この線引きを最初に決めておかないと、後から設定しようとしても現場が混乱します。
AIにどう頼んだか
私はコードを自分で書かず、AIに頼んで作ってもらっています。このときも、やりたいことを日本語でそのまま渡しました。
社員が安全にAIを使える社内チャット環境を作りたい。
- 外部のAIサービスに直接アクセスさせず、社内経由で使わせる
- 用途によって使えるモデルを分けたい。軽い作業用と、精度が要る作業用の2種類を用意して
- 社内ドキュメントを渡せる機能は、使える人を限定できるようにして
- 誰がいつ何を使ったか、ログが残るようにしておいてほしい
社員は特別な設定なしにブラウザから使えて、管理者だけが権限を変えられる形にして。
返ってきた構成をもとに、実際の運用に合わせて調整しました。「ログを残す」は後から入れようとすると面倒なので、最初に要件として入れたのは正解でした。
必要なもの
この構成で最低限要るのは3つです。
- チャットUIを動かすサーバー(クラウド上に小さく立てられます)
- 使うAIモデルのAPIキー(複数モデルを切り替えたい場合は複数)
- 権限管理の設定(どのモデルを誰が使えるかを決める作業)
特別に高いものは要りません。ただ、管理者が設定を変えられる人を最低1人決めておかないと、後から詰まります。ここだけは準備の段階で決めておく価値があります。
情報を外に出す範囲を、自分で決められる状態にする
「外部サービスに情報を送らせたくない」という要望には、完全に応えられません。AIモデル自体はAPIを通じて外部のサーバーで動くからです。
ただ、「制御できない状態」と「管理できる状態」はかなり違います。社員が直接外部サービスにアクセスする状態では、何が送られているか把握できません。社内の入口を通す形にすれば、接続先モデルの変更も、権限の変更も、ログの確認も、管理者が一か所でできます。
完全に閉じることと、管理できる状態にすることは別です。私は後者が現実的だと思っています。
全社解禁を怖くてできない、という状態が長く続くのも損です。入口を1つ作るだけで、その詰まりはかなり動きます。
