以前、「サブスク課金システムを作りたい」という相談をもらって、AIと一緒にその日のうちに検証版を動かしたことがあります。使ったのはGoogleスプレッドシート、Google Apps Script(GAS)、HTMLの静的ページ、あとは決済サービス。全部ほぼ無料で使えるものです。
同じものをシステム会社に依頼すれば、見積もりだけで時間がかかり、開発費もそれなりにかかります。でもこのときは、その日のうちに「購入できる→スプレッドシートに記録される→メールアドレスで契約確認できる」というところまで動かしました。
使ったものと構成
構成はシンプルです。
ユーザーがHTML画面でメールアドレスを入力
↓
GASがGoogleスプレッドシートを確認(契約中かどうか)
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未契約なら決済ページへ遷移
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購入完了→スプレッドシートに記録
フロントエンドはHTMLとJavaScriptだけ。バックエンドはGASのウェブアプリ機能で代替できます。データベースはGoogleスプレッドシート。メールアドレス、プラン名、購入日、解約日の列を作っておくだけです。
GASはGoogleアカウントがあれば誰でも使える実行環境で、月の費用はゼロ。これでスプレッドシートへの書き込み、決済サービスとのやりとり、フロントへの返却の3役をこなします。
詰まった箇所を正直に書く
順調に動いたとは言いません。実際には2か所で詰まりました。
1つ目はCORSエラー。 ブラウザのセキュリティの仕組みで、HTML画面からGASのURLを叩くと弾かれます。最初に普通にfetchで叩いたら即エラーが出て、「あ、これか」となりました。GASをウェブアプリとして公開する際の設定(「全員がアクセスできる」に変更)と、リクエストの送り方をJSONP方式に変える、という2段階の対処が必要でした。AIへの指示は「フロントからGASにCORSエラーなく通信したい」と日本語でそのまま渡しています。
2つ目は決済サービスのキーのタイポ。 シークレットキーのプレフィックスを「sk_test_」と入れるべきところを「spk_test_」と入れていて、ずっと「無効なAPIキー」エラーが返ってきていました。何度かやりとりしてからログを見て気づきました。要するに人的ミスです。こういうミスは、会社に頼んでいても発生します。
どちらも詰まりましたが、解決できました。「システムは専門家でないと触れない」というのは、少し言い過ぎだと私は思っています。
先にお金をかけるリスク
新しいサービスを始めるとき、「まずちゃんとしたシステムを作らないと」と考える人が多いです。でも、ちゃんとしたシステムを作った後で「思ったより使われない」が判明するのが一番痛い。お金も時間も使った後なので、引き返しにくくなります。
検証版の目的は「需要があるか確かめること」だけです。UIがきれいかどうかは二の次。「お客さんがお金を払ってくれるか」「想定した使い方をしてくれるか」を確かめるのが先で、そのためにフル機能は要りません。
私がよく見るのは「メールで手動対応→反応が取れたら自動化」という段取りです。最初の問い合わせをメールで受けて、スプレッドシートに自分で記録して、それだけで月に数件来るなら自動化する価値があります。まず0件なら、どれだけ便利なシステムを作っても同じです。
AIへの頼み方と、ツール選定の理由
私はコードを手で書くより、AIに頼んで作ってもらいます。このサブスク課金システムも、AIへの最初の指示は日本語でこう渡しました。
メールアドレスで契約中プランを確認できるようにして。スプレッドシートにメールアドレスがなければ全プランを購入できる状態に。購入したらスプレッドシートに記録される。バックエンドはGAS、フロントはHTML+JSで。
技術の指定は最低限にして、「何がしたいか」を業務の言葉で渡す方が、動くものが返ってきやすいです。「GASとStripeを連携して」と渡すより「購入したらスプレッドシートに書き込みたい」と渡す方がいい。詰まった時も「こういうエラーが出た、どう直す?」と現象をそのまま渡せばだいたい解決の糸口が返ってきます。
GASとGoogleスプレッドシートを選んだのも理由があります。Googleアカウントがあれば動く、余分なサーバー契約が要らない、スプレッドシートはどの担当者でも見られる。スケールしないと言われますが、検証段階の処理量なら十分です。
どのくらいの規模の話か
今回の例は、シンプルな4プランのサブスク販売でした。「スプレッドシートに載る情報でサービスが動くなら、まずGASで」という判断です。
複雑な在庫管理や複数拠点でのリアルタイム連携が必要な案件には、このやり方は向きません。でも「まず試したい」段階の話なら、GASとスプレッドシートで相当なことが動きます。これは私が実際に動かした体感から言っています。
最初から作り込まないことを「妥協」と感じる人もいます。私はそう思いません。需要を確かめる前に大金を投じることの方が、よっぽどリスクが高い。
