ある顧客から時計の自動査定システムを作ってほしいという相談が来たとき、私はまず提案書を用意しました。システム構成、フロー、費用、納品物の一覧。紙1枚に見えても、ゼロから書くと数時間かかります。
このとき私がやったのは、要件を整理したメモをそのままAIに渡して、HTMLの提案書として組み上げてもらうことです。フロー図も、技術仕様の一覧も、注意書きも、AIに「こういう流れで、こういう構成で」と指示しながら形にしていきました。
提案書の何に時間がかかるのか
構成を考えること自体は、そう難しくありません。詰まるのはだいたい、言葉にする部分です。
「このシステムを入れると何がどう楽になるか」を、相手の業務に合わせて具体的に書こうとすると、手が止まります。メリットを並べるだけなら誰でも書けますが、相手がどこで詰まっているかを踏まえて書くのは、毎回考える作業が伴う。
それと構成。流れを組み立てながらフォーマットを整えながら修正しながら、というのを一人でやっていると、1時間が気づいたら3時間になっています。
AIに渡したのは「業務の言葉」
提案書をAIに作ってもらうとき、特別なフォーマットは要りません。
時計査定システムのときは、こんな感じで渡しました。
品物の自動査定システムの提案書をHTMLで作りたい。フローはまず、品物の詳細が分かる人とわからない人を振り分けるフォームから始まる。詳細が分かる人は5項目(ブランド・モデル・型番・付属品・状態)を入力して自動査定、わからない人は画像をアップロードできる問い合わせフォームに進む。査定結果と問い合わせはそれぞれスプレッドシートに記録する。費用はこちらで決めた金額を入れて。使用技術と役割の一覧も入れて。
これだけで、フロー図付きの提案書の骨格が出てきました。あとは読んで直す作業です。「右矢印はいらない」「費用の数字が違う」「この一文は削って」と言いながら整えていく。
修正の往復はありますが、ゼロから書く3時間と比べると、体感で半分以下でした。
過去パターンを持っているかどうか、で差がつく
一回使ってみると分かるのですが、AIへの指示の精度は、自分が「どういう提案が通ったか」を把握しているかどうかで変わります。
何を盛り込むと相手の反応がよかったか。どういう順番で説明すると分かってもらいやすかったか。費用の提示をいつ出すのがよかったか。このあたりが頭に入っていると、AIへの指示が具体的になります。
逆に、過去の実績を「まあ何とかなった」くらいの感覚のままにしていると、「それっぽい提案書」は出てきますが、自分が本当に使えるものにはなりにくい。
何を渡せばいいか
実際にやってみると、渡すものは3つくらいで十分です。
- 顧客の課題と要望(なるべく具体的に、相手が言った言葉で)
- 提供するもの・できないことの線引き
- 費用と納期
過去に似たような提案を通した経験があれば、そのときの構成や言い回しも一緒に渡すと、出てくるものの精度が上がります。「前回こういう提案書で受注した。今回も同じ順番で」という指示は、AIに普通に通じます。
詰まる場所が変わる
AIを使うようになって変わったのは、「何を書くか」を考える時間が長くなったことです。
以前は「書く作業」と「考える作業」が混ざっていたので、手が遅い分だけ全体が遅かった。今は書く部分をAIに任せているので、「この顧客にはどういう順番で話を展開するか」という判断に集中できます。
時間が減ったというより、詰まる場所が変わった、という感じです。それはそれで正しい変化だと思っています。
注意しておきたいこと
出てきた下書きをそのまま出すのは、やめた方がいいです。
AIが生成した文章は、整ってはいますが無難になります。相手の業種の言葉になっていなかったり、こちらの実績や強みが薄くなったりする。読んで修正する時間は必ず要ります。
それと、費用や納期、保証範囲など、数字が絡む部分は必ず自分で確認してから出す。AIが気をきかせて「○週間程度」と入れることがあります。そのまま送ると後で困ります。
下書きを早く出すツール、という位置づけで使うのがちょうどいいです。
