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帳票・書類の自動化

月次の会計チェックとPL作成は、ルールにしてしまえば自動で回る

経理代行での実例から見えた「不足チェック」設計の考え方

2025-12-29

月次の会計チェックとPL作成は、ルールにしてしまえば自動で回る

飲食業の経理代行を受けている会社から、依頼を受けたことがあります。複数施設の売上記帳と請求記帳の代行です。

最初の依頼はAI-OCRの構築でした。紙の書類が多く、手作業で入力しているので自動化してほしい、というものです。ここまでは分かりやすかった。

ただ、話を詳しく聞いていくと、困りごとが思った以上に広い。月次のPL(試算表)を作るのに数営業日かかっていて、その原因の一つが「書類が揃っているか確認する作業に時間がとられている」こと。営業日を計算しながら各店舗・施設に証憑(領収書や請求書など)の提出を催促し、やっと揃ってからOCRと集計が始まる。そこでようやく試算表が出てくる。

この流れを毎月繰り返している。


最初にやること:不足チェックを「ルール」にする

月次PL作成が遅れる原因の大半は、出てくるデータの量より「必要なデータが揃っているかどうかを確認する時間」にあります。書類が来ているかどうかを一件ずつ追いかける作業は、繰り返しが多い割に判断が必要ないところです。

そこで私が最初にAIに頼んだのは、PL生成より前の不足チェックでした。

毎月決まった施設から、決まった書類が来ることになっている。

  • 各施設の売上日報(日次)
  • 仕入れ先の請求書
  • その他経費の領収書

月末時点でこれらが全部揃っているかをチェックして、 足りていない施設・書類の種類を一覧で出してほしい。 「〇〇施設の仕入れ請求書が未着」みたいに具体的に書いて、 催促の連絡を入れやすい形にして。

細かい「何が来ていたら揃い」という条件をルールとして書き下ろし、それをAIに渡す。受け取った一覧を見て、担当者が抜けているところだけフォローする。全部追いかけていた作業が、「一覧の確認と抜けた部分の連絡」に変わります。

「何が来たら完成か」を言葉で定義する作業が最初の山場です。経理代行の現場では、これが意外と口頭の慣習で動いていることが多い。


揃ったらPLを出す、を自動でつなぐ

不足チェックが通ったら、次のステップは数字の集計とPL(試算表)の生成です。

AIへの頼み方はこんな感じでした。

書類が揃った施設から順に、売上・仕入れ・経費の金額を読み取って 勘定科目ごとに集計し、施設ごとのPLフォームに転記してほしい。

フォームはこのテンプレートを使う。 読み取り結果に自信がない行(金額が0や空白、読み取れなかった箇所)は 色をつけてフラグを立てて、後で人が確認しやすくして。

読み取り結果に不確かな箇所があるとき、AIが「これはたぶん合っている」と判断して先に進むより、フラグを立てて止まってくれる方がいい。確認を省くために導入したのに、間違いが埋め込まれたPLが出てきても困る。

「自信がない行は止まる」という挙動をAIに持たせることが、実運用では重要です。


やりすぎた仮説に引き戻された話

最初に依頼の全体像を整理していたとき、この経理代行の会社が対応している顧客の困りごとを一通り考えてみました。月次PL以外にも、店舗間データの分断や、グループ法人間取引の突合など、課題の候補を列挙し始めたのです。

そこで自分の守備範囲を超えていることに気づきました。

経営管理の仕組みを整えたり、複数社をまたいだシステム統合を提案したりするのは、自分には受けられない。「困っている」と聞いても、対応できなければ意味がない。私はAIと自動化で動く仕組みを作る人間であって、経営コンサルではないので。

この判断をしてから、対応範囲を絞りました。

  • AIとルールで解けるもの
  • バックオフィスの処理作業に閉じるもの
  • 今ある手元のスキルで動かせるもの

この三つに入ることだけを受ける。そこに「不足チェック → OCR読み取り → PL生成」が綺麗に収まります。

何でも提案するより、受けられるものを正確に絞る方が、実際に動く仕組みを作れる確率が上がります。


必要なものと難しい部分

同じことを別の現場でやるとき、必要なのはだいたい三つです。

  1. 毎月来るはずの書類の種類と来る元(施設・取引先)の一覧
  2. AIが書類を読み取って結果を置く場所(スプレッドシートやファイルサーバー)
  3. PLのテンプレート(勘定科目の並びと集計先が決まっているもの)

難しいのは技術より「ルールを言語化すること」です。

どの施設からどの書類が何日までに来れば揃いとするか、勘定科目はどの書類のどの行と対応するか。これが曖昧なまま進めると、AIが出す答えにずれが出ます。口頭で動いていたルールを文字に落とす段階に、一番時間がかかります。


月末の作業が変わること

自動化が動き始めると、月末の仕事の性質が変わります。

「書類が揃っているかを一件ずつ追いかける作業」が「不足一覧を確認して抜けた部分を連絡する作業」になり、「数字を手で集計してPLに転記する作業」が「フラグ付きの箇所を確認して最終チェックする作業」になる。

量が減るというより、判断が必要ない繰り返しの部分が機械側に移ります。月末に何十枚も書類を追いかけていた時間が、確認と判断だけに絞られる。

繰り返す作業をルール化できるなら、AIに渡せる可能性があります。月次処理は毎月同じことを繰り返すので、この考え方が効きやすい分野だと思っています。

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